Event Report

イベントレポート 2017.12.10

東京都市大学 人間科学部児童学科公開講座「からだにきく!~ヨーロッパの健康の知恵~」

東京都市大学 人間科学部児童学科公開講座「からだにきく!~ヨーロッパの健康の知恵~」

東京都市大学 人間科学部児童学科の先生による公開講座第3回目は、12月10日(日) オリーヴァ内科クリニック院長の横山淳一先生と本学人間科学部・早坂信哉教授による講演会「からだにきく!~ヨーロッパの健康の知恵」。同じく人間科学部・小林由利子教授が司会をつとめ、「横山先生が提唱される地中海食を実践することで、糖尿病の家系なのに糖尿病に悩まされない生活を送ることができるようになりました」と横山先生をご紹介くださいました。

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糖尿病のエキスパートで長年にわたってオリーヴの恵みを取り入れた地中海食の普及に尽力されている横山先生。「オリーヴ樹の恵を生かす!!健康増進と健康寿命の延伸」と題し、オリーヴ油を取り入れた地中海食がいかにからだに良いか、その根拠や事例を豊富に挙げながらお話をしてくださいました。

IMG_4056夢キャンご自慢の眺望を話題に挙げて、「多摩川は英語で言えば”タマリバー”。こんなにいい眺めですから、ここはたまり場になりますよ」とジョークを飛ばし、和やかに講演がスタート。

横山先生は代謝性疾患の診療に長年従事していらっしゃいます。代謝性疾患には生活習慣が大きくかかわっており、中でも食生活が占める割合が大きい。そこで、横山先生が提唱されているのがオリーヴ樹の恵みを取り入れた地中海型の食生活です。動物性脂肪を摂りやすく、早く食べて早く仕事をするのに向いている米国型ファストフードに対して、地中海食は動脈硬化を抑止するオリーヴ油を食生活に取り入れ、ゆっくり食べるスローフード。血中コレステロール値と冠状動脈疾患による死亡率との関係をみると地中海地域はその死亡率が少ないそうです。血管を若く、しなやかに保つことが長寿の要因の一つですが、ビタミンEやC、ボリフェノールといった抗酸化物質が地中海食には豊富に含まれているとのこと。特にオリーヴ油は多種多様の抗酸化物質が豊富に含まれており、母乳の脂肪酸構成成分に近い=合わない人がいない、動脈硬化を予防するのに適した油脂と言えるそう。

・・・でも、油を積極的に摂ったらカロリーオーバーになりませんか?いえいえ、横山先生によると「脂質は量よりも質が大事」で「脂質は糖質、たんぱく質と並んで三大栄養素の一つ。摂取エネルギーばかりに目を向けず、良質のものをきちんと摂ることが大切」だそうです。糖質もしかり。「糖質OFF」のダイエットではなく、インスリン分泌を過度に刺激させないよう、穀類は精製されていないものを用い、調理に砂糖を使わず、ショ糖の摂取を制限すれば糖質も摂ってOK。

具体的には、主食は白米⇒玄米、白いパン⇒全粒粉のパン、麺はうどんと違って空気胞がほとんどない乾燥パスタを。オリーヴ油をそのまま生で使うときはExtra virginで、できれば手摘みで摘果24時間以内にコールドプレスされたものを。パンにつけたり、ドレッシングの材料に使うだけではなく、納豆やお刺身、豆腐にかける、みそ汁に入れたり野菜ジュースに入れてもおいしい。加熱して使うときはグレードにはこだわらず、酸化の進んでいないものを。目玉焼きをオリーヴ油を使ってコールドスタートでつくり(ミニトマトも入れます)、炊いた玄米の上にのせて、ちょっとお醤油をたらしてスプーンで食べる――その写真のおいしそうなこと!

さらに、食事はおいしくなくては意味がない!地中海食は現代に求められる食事の要素(元気が出る、おいしい、健康をもたらす、調理に手間と時間がかからない)を満たし、生活習慣を革新的に改善するだけでなく、オリーヴ樹を植えることで日本の各地を革新的に緑化する―――という壮大なお話でした。

続いては、「ホンマでっか!?TV」や「世界一受けたい授業」といったテレビ番組でおなじみの東京都市大学人間科学部の早坂信哉教授が「ヨーロッパのスパから学ぶ!温泉・お風呂で健康づくり」と題する講演を行いました。

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早坂先生と言えば、入浴習慣、温泉医学の研究の第一人者として注目され、テレビなどのメディアにも出演されています。でも、もともとお医者さまの早坂先生がなぜ「お風呂」研究の第一人者なのか?その答えは先生の自己紹介の中で明かされました。早坂先生は自治医科大学医学部をご卒業後、へき地医療に従事されていました。その際、巡回のお風呂を楽しみにしている患者さんがたくさんいたが、楽しみなあまり血圧が上がってしまうこともしばしば。そうなると看護師さんから「先生、○○さんの血圧、上が160あるけどお風呂入れてもいいですか?」と問い合わせがよくあったそうです。20年ほど前は入浴可能な血圧に関する明確な指針がなく、それなら自分で明らかにしようと思ったことが研究のきっかけだったとか。ちなみに早坂先生は多くの症例の解析から「高齢者160/100mmHg以上の高血圧及び37.5℃以上の発熱時、入浴事故のリスク増」という訪問入浴等での入浴可否判断に初めての参考値を提示されています。

今回は「ヨーロッパのスパから学ぶ」ということで、ヨーロッパの温泉事情の紹介からスタート。古くは古代ローマ人によって、ヨーロッパ各地に温泉療養地が建てられ、今でもヨーロッパの人たちは温泉入浴のみでなく、水中での運動、蒸気浴、泥浴、飲泉、吸入など温泉の多彩な利用法を積極的に取り入れているとのこと。早坂先生がその様子をたくさんの写真で紹介してくださいました。何より日本と異なるのは、ヨーロッパの温泉は温泉とその周りの環境を生かした施設・サービスが整備され、その利用に健康保険が適用になるということ。温泉を「医療」として利用しているのですね。例えば、フランスでは年間3週間まで医療保険適用となり、平均費用一人 1800ユーロのうち、一部が保険から返還されます。ドイツの温泉保養地には「温泉」だけではなく、周囲の環境を生かした「公園」と快適な「温泉保養館(KURHAUS)」の3点セットが整備され、温泉療法のために訪れた人はリウマチなどの治療のために滞在しながら、地域の経済を潤す役割も担っているそうです。

終盤、横山先生がフロアからの「生活習慣をかえるのは難しいのですが」という質問に「実際に食べておいしい!体を動かすと気持ちいい!という体験をすればかわりますよ」とお答えになっていました。早坂先生が提唱する「40度のお湯に10分つかるのが健康によい」というのも「40度なんてぬるくてそんなに長く入っていられない、というのであれば水着を着て入るような温泉にお友達と入っておしゃべりでもしていれば、長く楽しく入っていられますよ」と。そして「ゆっくり、水を飲みながら食事をするだけでも血糖値は下がります。この夢キャンパスからの眺めがこんなにいいんですから、ここから外でも眺めながら食事をすればゆっくり楽しめますよ」(横山先生、ごめんなさい!夢キャンパスは食事禁止なのです)。なるほど!この柔軟な発想と地中海食が横山先生の穏やかでつやつやのお顔の源とお察ししました。

そして、今回も人間科学部児童学科の小林[由]研究室、早坂研究室の学生と有志の学生の皆さんが、受付に、誘導にと大いに貢献してくれました。そんな中、児童学科のSくんが、すかさず早坂先生に「子どもでも40度のお湯に10分がいいですか?」と質問。さすが保育士さんを目指すだけのことはある!ちなみに、早坂先生の答えは「やっぱり子どもは身体が小さい分、もう少し短い方がいいね」というものでした。

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今回の講演で得た知識を活かして、来たる2018年も元気に過ごしたいものです。2018年も夢キャンパスにご期待ください!

 

 

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2022年7月1日